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ニュース報道の心

2015年4月10日(金)~大石格編集委員~「キューバと国交 オバマ大統領の胸の内」  小谷真生子

 4月9日のフカヨミプラスは大石格(おおいし・いたる)編集委員でした。


 大石氏は2008年から12年までの4年間、日本経済新聞社のワシントン支局長として、ブッシュ政権からオバマ政権への移行と、その後の米国経済と政治をつぶさに見て取材してきました。


 9日のフカヨミプラスで大石氏は、今月(4月)10日からパナマで開催される米州サミットにフォーカスしました。サミットで、50年以上にわたり断絶されてきたアメリカとキューバの首脳会談が調整されています。アメリカ政府がキューバのテロ支援国家指定を解除する方針も示しているのです。


 アメリカのオバマ大統領とキューバのカストロ国家評議会議長が握手をする歴史的瞬間になるかもしれません。


 そこで興味深いのが大石氏の分析による、オバマ大統領の胸の内。「キューバとの国交正常化でアメリカの歴史に名を残す」ことがオバマ大統領の悲願だというのです。09年1月、第44代アメリカ合衆国大統領に就任してから1期目が終わり、2期目も残すところあと2年足らずとなったオバマ大統領。


 オバマ大統領は、実は中南米と関係を改善したいと考えていて、その中でも特に象徴的な存在であるキューバと仲良くしたいと考えているというのです。


 その現象として、オバマ大統領は09年の大統領就任直後の米州サミットで、ベネズエラに仲介してもらいキューバと関係改善を試みようとしましたが、その年、サミットにキューバは参加しませんでした。


 ただ、キューバ不参加をアメリカが事前にわからないはずはありません。ましてや、中南米の中でも親米はコロンビアくらい。他の中南米の国々であるニカラグア、ベネズエラ、チリなどはほとんどが反米。


 アメリカが米州サミットに参加しても良い思いをすることはほとんどなく、それでもオバマ大統領が就任直後に米州サミットに参加したのは、反米である中南米の国々と握手できれば、それがいずれキューバとの関係改善にもつながるのでは、と考えたのでは、と大石氏。


 実際、その第5回米州サミットが開催されたトリニダード・トバゴ共和国に同行取材した大石氏は、オバマ大統領が自らテーブルをまわって中南米の国々の代表と握手をしたのを見て、「オバマ大統領は(キューバとの)関係改善に相当本気だ」と思った、と言います。それもそのはず。サミットなどの場で、アメリカ大統領は中央に立ってさえいれば他国の代表は皆、寄ってくるのが普通でしたから。


 「(大統領)任期中にはなんとかするのだろうな」と感じたそうです。ですから去年(2014年)12月からアメリカ・キューバ間で国交正常化の交渉が開始されたことにも大石氏は驚かなかった、といいます。


 ただ、課題はあります。「国交正常化」が果たしてできるか、です。「国交」を「正常化」するとは何をどうすることなのでしょうか。それは双方の国に「大使館」をつくり、「大使」を交換し、貿易のための「通商条約」を結ぶことだそうです。


 今のオバマ大統領にこの「大使館」「大使」「通商条約」のうち、どれをクリアできるか、といえば、どれも難しい。「大使館」には予算が必要ですが、現在の上院は共和党が多数なため承認が難しい。「大使」任命にも、上院の投票による過半数が必要なので、これも難しい。「通商条約」は、キューバ革命後の国交断絶の際にできたアメリカのキューバへの輸出禁止令があり、この法令の解除にも議会の賛成がないとできないそうです。


 では、なぜ、それでもオバマ大統領は懸命にキューバに歩み寄るのでしょう。「1970年初期のアメリカと中国の国交樹立を思い返してみてください。米中国交回復後も、アメリカ議会での承認は得られず、長きにわたりアメリカから中国に大使を送り込むことはかないませんでした。


 大使館ではなく、まずは北京にアメリカの出先事務所を作ることから始めたのです。が、その後本格的に正常化するも、今なお米中国交正常化の中心として語られるのは、最初に毛沢東国家主席を訪問したニクソン政権下、ヘンリー・キッシンジャー国家安全保障問題担当大統領補佐官の名前です」


 つまり歴史に名を残すのは、2国間の正常化に最初にアプローチを試みた人物です。その後、どう正常化されたかは注目されません。
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 歴史上、現役のオバマ大統領によるアプローチで、アメリカとキューバの国交が樹立されることが重要なのです。


 「遠からずオバマ大統領がキューバに行く日も近いのでは」と大石氏。オバマ政権の締めくくりとなる2017年1月までのアメリカとキューバの国交正常化宣言。具現化されるか、私も大石氏と共に見守りたいと思います。


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