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ニュース報道の心

2014年11月14日(金)「軽薄短小」でウエアラブル時代を制す 山川龍雄

「尖った製品は、尖った技術基盤がなければ、作れません」「核となる技術をブラックボックス化し、先鋭化させていく」。11月12日水曜日のゲストは、セイコーエプソンの碓井稔(うすい・みのる)社長。プリンターの中核部品であるインクジェットヘッドの開発者で、「プリンターの父」と称されるほど、その道では名の通ったエンジニアだそうです。当然ながら、番組では、技術系出身社長らしいコメントが続きました。


一時期の業績低迷を抜け、主力のプリンター事業が絶好調なセイコーエプソン。ただ、番組では、新規事業として力を入れているウエアラブル事業に焦点を当てました。というのも、眼鏡や腕時計タイプで特徴のある商品を相次いで発売し、世界の注目を集めているからです。10月に幕張メッセで開かれた国内最大のIT(情報技術)・家電の国際見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン」では、同社のブースが最も人気がありました。


特に関心が高かったのが、今年6月に発売した眼鏡型の「モベリオBT―200」。大画面で映画やゲームなどを楽しめるほか、実際の光景にデジタル情報を重ねるAR(拡張現実)機能にも対応しています。11年秋に発売した機種の改良版で、重さは88グラム。従来の約3分の1まで軽量化しました。一般消費者向けだけでなく、医療や物流などB to B向けの幅広い活用も期待されています。このほか、脈拍や消費カロリーなどを計測できる腕時計型端末やゴルフスイング解析用システムなど、話題の商品が目白押しです。


正直なところ、碓井さんの話を聞くまでは、この分野で、日本企業が成功できるのだろうかと、少々懐疑的でした。というのは、ウエアラブルは、米グーグルの「グーグルグラス」、米アップルの「アップルウオッチ」など、世界の巨人がこぞって経営資源を投入している分野だからです。パソコン、薄型テレビ、スマートフォンなどと同じようにコモディティー化の波に襲われるリスクもあります。

しかし、碓井さんの話を聞いて、考えを改めました。セイコーエプソンのウエアラブル端末には、いずれも独自の技術や部品が埋め込まれているからです。例えば、物体の動きを正確に測定できるセンサー。「実はこうしたセンサーはゲーム機などにも使われていたのですが、当社のセンサーはハイスペック過ぎで、性能を持て余し気味でした」。それが、ウエアラブル端末の時代になって、ようやく日の目を見るようになったそうです。


また、碓井さんはこうも言いました。「当社の起源はウォッチ。ウエアラブルこそ、時計製造などで培った省エネ、小型化、高精度の技術を最も生かせる分野」。コメンテーターの日経新聞論説委員の関口和一さんは、さらにこう続けました。「コンピューターというのは、大型コンピューター、ミニコン、パソコン、スマホと性能を小型化してきた歴史。その延長線上にウエアラブルもある。小さく作るのは日本のお家芸ですから、そこに活路があるはずです」。


話を聞いているうちに、日経ビジネスが過去に打ち出した「軽薄短小」というキーワードを思い出しました。「より軽く、薄く、短く、小さく」を志向する考えで、ヒット商品から産業構造の変化まで新しい時代を表した言葉として、広く浸透しました。セイコーエプソンという会社は、本拠を構える長野県諏訪市を中心に、こうした技術基盤を長い年月をかけて築いてきた会社なのでしょう。その技術の粋を埋め込んだ商品であれば、簡単には他社に真似されないはずです。


もちろん、ウエアラブル時代の勝者になるには、ソフトウェアやサービス、デザインなどの総合力が問われます。課題はたくさんあると思いますが、にわかにウエアラブル時代の注目株となったセイコーエプソンには、日本のIT産業復活の先兵役として、この分野での躍進を期待したいものです。


最後に1つだけ。勝手に私の意見を言わせてもらうと、眼鏡型の端末などは、デザインが少々、無骨過ぎるように見えました。高機能、高性能に加えて、デザイン性が高まれば、もっと顧客層を広げられると思うのですが。


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