第一章 ニューヨーク
ビートを巡る旅は元春が80年代に暮らしたニューヨークから始まった。
30年前に住んでいた思い出の地、ニューヨークから旅は始まった。
カリブ系の多い地域、ブルックリンでは、
ドラム缶を改良して作られた楽器・スティールパンに出会う。
そして元春は、カリブ海移民の祭典での街を挙げてのスティールパン大会と、
翌日深夜に行われるパレードの一部始終を目撃することに。
泥や絵の具を塗り合う行進に魂の解放を感じる。


第二章 トリニダード・トバゴ
アフリカン・ビートが渡ってきたルートをたどる。
その後、元春はトリニダード・トバゴの首都ラバンティルへ。
奴隷として大西洋を渡ってきたアフリカ系移民が寄り添う
長屋街で、スティールパン誕生と共に生きてきたビートの長老と出会う。
そこで長老の語りやビートの音に耳を傾けた。
スティールパンの魅力を感じた元春は、
この日から黙々と練習を続けはじめる。

今、トリニダード・トバゴでは、カリプソ(奴隷時代、日々の苦労を面白可笑しく即興で歌を唄った歌)の原点がアフリカから渡った「グリオ※の語り太鼓」の言葉であるといわれ、アフリカへの思いを詩や音に託す動きも活発になっている。
そのような人々の思いがつまったビート、そして水平線の彼方にあるアフリカ大陸に思いをはせて、遠浅の海を歩き続けた元春。そして、ラバンティルのパンヤード(練習場)へと戻って行った。カリプソを長老達の前で朗読するために…。
※「グリオ」とは、王様の行動、為政者の行事の伝達や歴史、名家の系譜、生活上の教訓、時報などを、語り太鼓という楽器などを用いて、代々、民へ発信し伝え続けて来た人々のこと
