■マーケットウィナーズ( 7/4 放送 )
テーマ:
とある生保の決算から見えてくる株価急騰急落の背景
ゲスト :
岡崎良介氏
(ITCインベストメント・パートナーズ(株)取締役)
岡崎氏:
08年度が終わったところ、09年3月に終わった決算において、決算報告書の中に書いてあったんですが、この生命保険会社、額面4,000億円もの株式プットオプション、株式を売り権利、保険料のようなものです。下がったときに損失を回避できる権利を買っていました。キーワードで216億円、最初に買っていたんですね。契約期間が1年未満のオプションだったということ。それと額面に対して5.4%保険料を払っていました。さて、月日が流れまして決算がきました。09年3月31日。決算の日にこのオプションを再評価します。そうすると決算報告書にこういう数字がでてきたんですが、どこで買ったかこのときは分からなかったのですが、216億円で買ったプットオプションが値下がりしていました。134億円まで。なぜかというとおそらくは株価が上がったからです。その結果、216億円で買った保険料が、年度末には134億円に下がってしまいましたから、雲野生命は差し引き82億円の評価損を計上することになったという話です。ここでのキーワードは2つありますね。134億円になったという数字。この134億円は4,000億円の額面に対して3.4%の価値、これもキーワードです。
では、証券会社はこのとき何をしていたかというと、額面4,000億円の株式、プットオプションを雲野生命に216億円で売りつけました。つまり216億円お金が入ってきたわけです。そこで、果たして契約を結んでから満期になるまでどんな取引をしたでしょうというのがクイズでした。
回答の前に私の推測を出してみたいんですが、3月末の株式市場、どういう状況にあったかというと、今見てもらっているのは3月31日の日経平均のオプション価格です。プットの値段がどうだったかと。オプションというのはまず、いつ満期になるかというのがあります。これが4月限、4月の第2週の金曜日。5月限、5月の第2週、6月限は6月の第2週に満期になるオプションなんですが、ストライクプライス、行使価格というのがあります。先ほどの例によると8,000円とか7,750円とか、売る権利なんですね。一番右の隅に261円3.22%とありますが、これがプレミアムとパーセンテージ。この場合ですと8,109円に対するパーセンテージ。この3.22%が先ほどのキーワード、最後のところにあった3.4%ですね。この数字に非常に近い数字だということで、私の見立てでは、この雲野生命の契約は7,000円のプットオプション、7,000円で売る権利を、いつの時点かはここでははっきりしないんですが、これを6月満期のオプションで契約していたんじゃないかなという風に読んだ次第です。それでは回答です。簡単に答えるとまずこれが一つ目の答えです。株価が下がったら株式(先物)を売り建てる!これが100点の答えです。ところが、意外なことに、2名の方は200点の答えを出してきました。まさか一般の方でここまで分かる人はいないだろうと思っていたのですが、200点満点の答えはこちらです。さらに安いオプションを買い建てていくという答えが用意されていました。どこまで説明できるかは分かりませんがこれから順番にどういう仕組みになっているのかをご紹介してみたいと思います。
まず、順番に生命保険会社のポジションがどうなっているのかを見てみましょう。仮に日経平均を持っていたとしましょう。日経平均をこの生命保険会社は7,000円で買ったとします。7,000円で4,000億円も買ったと、そして保有していたとしましょう。そうすると横軸に日経平均、縦軸にどれだけ儲かったか損をしたかを表しているんですけれども、7,000円のときは0円。儲かって日経平均が8,000円になってくると500億円ぐらい儲かるんですかね。逆に6,000円ぐらいまで下がるとマイナスの500億円ぐらいですかね、こんな風に損をしていくという、こういう損益曲線になります。ところが株価がどんどん下がりそうになりましたから、ヘッジをしようとしたんですね。
これ以上7,000円よりも下回っちゃ嫌だということでプットオプションを買いました。生命保険会社は216億円もの大金を払ってプットオプションを買ったんですね。このプットオプションの損益曲線はこの赤い折れ線グラフです。7,000円を下回るとどんどん売り物を持つのと同じ格好になると。逆に7,000円より上のケースでは何も働かないというわけです。さて、この2つの曲線を組み合わせるとどんな画になるか。
こんな画になります。プットオプションを買ったおかげでどんなに日経平均が下がってももう安心です。逆に戻ったんですから、やれやれ良かったと、こういうわけです。ところが冒頭のキーワードで述べましたけれども、オプションというのは満期があります。この場合、1年未満でしたから、私の見立てが正しければ6月に契約が切れてしまいます。契約が切れると先ほどの曲線がどうなるか。
また元の木阿弥なんですよ。今年おそらくまた心配になるんじゃないですか、下がりだしたら。おまけによく見ると、最初のプットオプションと場所が変わっているんです。
去年のオプションは、もう少しコストが良かったんですよ。216億円払う前でしたから。今年の株式ポートフォリオはちょっと高くなってしまっているんですね。これが生命保険会社。証券会社はどうだったかというと、もう一回プットオプションの画を見てください。
生命保険会社が買ったオプションがこれ。
そのときに証券会社が売ったオプションはこの反対側です。証券会社は216億円もらいましたからね。これを拡大して見てみましょう。
鈴木証券の損益曲線はこんな風になっています。7,000円を下回ると損をするんですが、
この7,000円を境として、放っておけば、株価が8,000円、9,000円、10,000円だと216億円も濡れ手に粟ですよね。
下がりそうになったら今度は損失がでますから何かしなくてはいけない、ということで先ほどの正解、下がりそうになれば先物、あるいは現物、とにかく株を売らなければいけないというわけです。ここで実際の株式市場の動きを振り返ってみましょう。
今年の1月から6月。こんな風になってました。3月10日まで下がったんですね。3月10日からどんどん回復してきました。私はこの7,000円のプットオプションと予想しましたけれども、多分契約したのは1月14日辺りではないかなと思うんです。あるいは2月の頭ぐらい。
この3月10日まで鈴木証券は何をしたのかと言うと、下がっていますから、損失を回避するためにどんどん売らなければならなかったんです。
しかし3月10日を過ぎると今度は上がっていきましたからどんどん買い戻していかなければならくなったんです。なんかこの相場、鈴木証券が一人で作ったようにも見えませんか。で、この生命保険会社も一つではなく、無数の生命保険会社、金融機関が同じようなことをやったのではないかと。実際にどのようにポジションが動くか計算してみたんですが、こんな風になります。
下の棒グラフが仮に4,000億円の7,000のストライクのプットオプションを買っていたときのヘッジの売り建てのポジションなんですけれども、これぐらい売らなくてはいけません。いきなり出だしから1,000億円売らなくてはいけません。2,000億円ぐらいまで売りを重ねていって途中3月10日からどんどん買い戻していくというような売買が行われていたのではないかと思います。