■マーケットウィナーズ( 6/27 放送 )

テーマ: ある生保の決算から見えてきたもの
ゲスト :
岡崎良介氏
(ITCインベストメント・パートナーズ(株)取締役)


岡崎氏: 相互会社なので、株主総会はないんですけれども、しかし一部で株式会社化したものもありますけれども、ほとんどものが総代会という株主総会みたいなもので最終的には決算を行うんですが、現代ではディスクロージャーが進んで色々なものが見えるんですね。
その中で、とある生命保険会社の決算書に、あるアナリストが持ってきた数字に目が留まりました。


この保険会社は、一般勘定という中核をなす資産がこんな風に説明されています。19年度末、この生命保険会社は3兆8,500億円の資産を持っていたんですが、20年度末は3兆6,000億まで資産を減らしてしまいました。株が下がりました。あるいは円が強くなった。その日本株のところなんですけれども、19年度末は4,900億円ぐらいですね。4,900億円が減ってしまって、3,000億円ぐらいになってしまいました。
市場が下がっていますから当然だと、思うかもしれませんが、今回お話するのはそんなことではありません。最後に見た平成20年度末の日本株の残高を見てもらえますか。この会社は3,000億円を3月末の時点で保有していました。
では、この決算書の奥のほうまで進めていきます。


どんどんページを送っていくとこういうページに突き当たります。これはデリバティブ。先物とかオプション、もしくはスワップ、こういったものですね。派生商品の残高なんですね。


下の段にいってもらいたいんですけど、これは株式の派生商品、どういうものを持っていたかの残高なんですね。
まず一番左端のところを見てください。株式の店頭オプションを持っている。店頭取引、我々が普通、株式市場で売買しているものというのは証券取引所で取引されているものなんですけれども、店頭というのは、代表的な例は債権なんですけれども、相対で、あなたと私で取引するというものなんですね。これは取引所には数字は載ってこないんですよ。つまりベールに隠されているものです。
この店頭取引で買建てのプットオプションをこの保険会社は保有していました。147億9,600万というのは、平成19年度、去年の3月末の数字です。プットの買建てというのは、株が下がったときに株を売る権利を持っている。下がったときでなくてもいいんですが、株をある一定の値段で売る権利を保有している。その保険料なんですよ。1万円の売る権利を持っているならば、8,000円になろうが、7,000円になろうが1万円で株を売ることができるということです。でもそれには保険料を払わなければいけない、というわけです。今見たのが平成19年度の数値です。
そして、今年、平成20年度末の数字を見て下さい。同じくプットオプションの買建てを、この保険会社は4,000億円です。4,000億円ものプットオプションを持っていたんです。
先ほど、日本株の3月末の保有残3,000億円でした。おそらく平成20年度のどこかでこの会社は保有する株式全てに保険をかけたんですね。どんなに下がってもいいように全部にプットオプションをかけたんでしょう。プットオプションの保険料ですけれども、この4,000億円に対して216億3,100万円払ったんですね。4,000億円の額面に対して約5.4%の保険料を払ったんです。それが今度右のほうに13,422という数字がありますよね。
これはなにかというと、3月末のこの保険料の時価なんです。保険料が値下がりしているんです。216億円で買った保険料が3月末には134億円まで値下がりしました。 その結果4,000億円に対して保険料は3.4%に下がった。この結果保険料の評価損が、この保険会社では82億円も計上したんですね。いったいこの会社はいくらで日本株を売る権利を買ったんだろうと、そしてどうしてこんな風に保険料が下がってしまったんだろうという疑問を持たれたと思います。
そこで、今年の3月31日の日経平均株価を使ったオプション取引が、どんな風に実際の値段がついていたのかを確認してみたいと思います。



こちらが3月31日に実際に取引されていた日経225オプションの行使価格と限月の一覧表です。行使価格がいくつもあります。8,250円から8,000円まで。
これは8,250円で売る権利です。一番下は7,000円で売る権利。それが4月限、4月までに売る権利が一番高いところで8,250円だと338円。しかし7,000円で売る権利は、4月だったらあと少ししか時間がないですから、もうこれぐらいになっちゃうんですよね。
そして先ほどの3.4%。4,000億円の額面に対して216億円、3.4%だったわけですけど、こちらは261円の3.22%6月限。これと大体似たようなところなんです。おそらく7,000円まで落ちたときに高い値段で誰かに買ってもらう権利をこの保険会社は持っていたのではないかと思うんですよ。あくまでも私の推測です。
いずれにしてもこういうかたちで日本の金融機関は、たぶんこの生保だけではないと思います。あちこちで持っている保有株をヘッジしたんだと思います。