
中国史上最後の皇帝・溥儀(ふぎ)のための歴史に残る婚礼の
儀がここに始まった。婚儀の前日しきたりに習ってひそやかに
入内した淑妃文繍(ぶんしゅう)に対し、盛大に迎えられ華燭の
典を執り行った皇后・婉容(えんよう)。だが、初夜の寝間での
溥儀と婉容の会話はかみあわず、その後も二人の心はすり
あうことのないままそれぞれの方向へと離れていった。溥儀の
生活は婚姻によりますます孤独感を強め、朝賀の折に観た
芝居は彼の抑圧された心をいよいよ揺るがしてこの禁色の
魔界からの脱却を強く触発したが、牢獄のように己を囲む
紫禁城の憎むべき城壁を前に、彼はただ苦しみにあえぐばかりであった。