
皇帝・溥儀(ふぎ)の新生活第一夜は、宮廷のしきたりに則り
真っ暗な部屋に閉じ込められることから始まった。そして幼
な児にはいささか過酷なこの試練から目覚めた翌朝、太監た
ちは、しきたり通りに溥儀の衣を調え、一挙一動に最上級の
敬意を払って彼に接する。だが挨拶をしようとして頭をぶつ
ける愛らしいこの皇帝は、食卓に溢れる山海珍味よりやさし
い乳母の乳を好む子供であった。
実際の政治は隆裕(ロンユイ)皇后による垂簾政治によって行
われ、朝廷内で激昂する父・摂政の袁世凱(えんせいがい)打
倒論争を驚きの表情で見ていた溥儀は、父と共に家に帰りた
いと駄々をこねる。溥儀はまるで、ほの暗い紫禁城に据えら
れた人形のような存在だった。