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2月8日 #15 賃上げと経済成長

講義余禄

「景気回復の実感を全国津々浦々に」。安倍首相が今国会の施政方針演説で使った表現です。アベノミクスの恩恵を全国にあまねく浸透させる、という決意表明といえます。これを賃金にあてはめてみれば、いずれは大企業から中小企業までムラなく賃上げが実現されるように、ということになるのでしょうか。
「賃上げが先か、景気の本格回復が先か」。この議論には、法人税率と税収の論戦よろしく、ニワトリと卵の議論に似た側面がうかがわれます。もっとも、現在の産業界は賃上げの必要性について労使双方の認識が一致している状況です。これは近年、考えもつかなかったことであり、まさに日本が大きな転機を迎えている証左といえるでしょう。
ただし、その方法論については立場などによって明らかな温度差があります。果たしてベアは選択しうるのか否か。複数の論点を紹介した記事が日本経済新聞でもいくつか掲載されています。
★「創論 ベアは広がるか」 (2014年1月26日)
★「賃金・雇用2014 労使に聞く」 (同年2月4日)
賃上げの可能性について経済学の視点から分析した連載記事も「経済教室」面に連載されました。
★「時事解析 賃金は上がるか 1~5」 (同年1月6~10日)
この連載では今回の講義でも触れている、働き方の多様化の必要性などについても言及しています。
賃上げの恩恵をあまねく及ぼすには、その前提として様々な雇用形態に応じた賃金体系の整備が欠かせません。とりわけ日本では非正規社員に対する待遇の見直しが目先の課題となっています。ようやく国も動き出しました。
★「正社員と同じ仕事のパート 有期雇用も同待遇に」 (同年1月5日)
いち早く解消したいケースは、あるサービスなどに対する社会的な需要が大きいにも関わらず、賃金水準がそれに見合わないとされ、担うべき労働の供給が滞っている「ミスマッチ」です。その顕著な例が保育や介護でしょう。
★「求職しない『潜在保育士』 『賃金合わず』47%」 (同年1月6日)
こうしたミスマッチ解消には国による雇用者への補助なども必要ですが、デフレを脱却し景気回復が本物になれば、利用者自身が許容しうる負担水準もじわり上昇していく可能性があります。

参考図書

タイトル 著者 出版社
日本の景気は賃金が決める 吉本佳生 講談社
雇用再生 清家篤 NHKブックス