分断された音楽の架け橋~指揮者・柳澤寿男 1530日の闘い~
7月14日(土)夜9時放送
ナレーター:遠藤憲一
2010年・第6回 民放連 日本放送文化大賞グランプリ受賞作の続編
前作「戦場に音楽の架け橋を」とは
2009年6月にBSテレ東で放送した
『戦場に音楽の架け橋を~指揮者 柳澤寿男 コソボの挑戦~』。
日本人指揮者の柳澤寿男が、民族・宗教問題が根深く残るコソボで、
対立する民族を混合したオーケストラを結成。
それぞれの民族の住む地区を結びながらも渡る人がいない「分断の橋」と
呼ばれる橋があるミトロヴィッツアの地でコンサートを開く、
という夢にむけての葛藤を、1年以上に及ぶ密着取材で描いた。
そしてこの番組は、「日本人には理解が難しいコソボ内戦の悲惨さや
民族対立の深さが主人公の活動を通じて丁寧に描かれ、
利のない日本人こそが平和に貢献できる可能性があることを気付かせる」
として、2010年・第6回 民放連 日本放送文化大賞グランプリを受賞した。
コンサートの成功から3年。民族を超えたオーケストラ「バルカン室内管弦楽団」
はコンサートの活動が世界中で評価され、ウィーン・ニューヨーク・サラエボ・東京
にも招聘されてコンサートを行なうほどになり、行く先々で称賛された。
また独立後のコソボの町は好景気で活気づき、柳澤の給料も300ユーロから
450ユーロとなった。
しかし久しぶりに訪れたミトロヴィッツアの「分断の橋」に柳澤は衝撃を受ける。
橋の入り口にはバリケードが張られ、中央には人の手によって作られた
大きな壁がそびえ立っていた。
実は、2011年9月に多くの重軽傷者を出す民族間の衝突が起こり、
橋は封鎖されたのだった…。
柳澤は悩んだ。
「自分のしたことは何だったのか?」
「本当に音楽には人の心を動かす力があるのか?」
そんな時、柳澤は客演を依頼されて訪れたアルバニアの町でバルカン半島を流浪する民、ロマ民族に出会う。
学校に通わず、独自の言葉を話すため現地の言葉も通じず、物乞いをして暮らす人々…だが、
街のいたるところで自由に思いのままに太鼓や笛を演奏する彼らの「音」が、音楽の力を疑い、
自らの思いを見失いかけていた柳澤の胸に深く刺さった。
「楽譜も制約もない彼らの音楽と一切の無駄がないクラッシック音楽は
いわば正反対にある。人間の営みと音楽は常にともにあるからこそ、
共同作業することで何か新しい発見があるのではないか?」
柳澤はふたたび立ち上がった。
「ロマの演奏者と共演できないか?」
彼らの音楽を譜面におこしたものの、そこに縛られることなく演奏し、
時間やルールにもお構いなし…
不安の中、迎えた本番の日。
仲間の演奏を見ようと集まったロマの人々も見守る中、コンサートは始まった。
彼らとの共演は誰にも予測が不可能。そして予想通りの暴走が始まった!
しかし、バラバラだった音がハーモニーになったとき、
見たことがない世界がそこには繰り広げられたのだ。
本当の「音楽の力」それは、「人を動かす力」だと改めて気づく。
「分断の橋」が象徴する対立、
それは今もコソボの独立を認めていないセルビアとの対峙を意味する。
柳澤はそのセルビアの首都ベオグラードで改めて民族融和のための
コンサート実現を決意するのだった。そもそもセルビアはコソボの独立を
認めていないため、コソボ人はセルビアでどのような扱いを受けるのか?
最悪の場合つかまる可能性もある。実際コソボからきたアルバニア人と
間違われて刺されるという事件も発生していた。
そんな危険な土地で、アルバニア人とセルビア人の民族融和の
コンサートは開けるのか?
一方でコソボ国立交響楽団のメンバーのひとりであるパトリスは、
クオーターでセルビア人の祖母との再会を願っていた。
旧ユーゴは2003年まで存在しており、異民族間の婚姻も数多くある。
その子孫たちが新たに生まれた国境のために、会う事も困難な状況下に
置かれていたのだ。
音楽の力を信じ、心の中の国境という厚い壁を乗り越えようとする
柳澤寿男の1530日をカメラは追い続けました。
ハーモニーがうみ出す新たな世界!あなたもその瞬間に立ち会ってください。