日本の伝統色1日本の伝統色2日本の伝統色3日本の伝統色4
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【金箔色(金系)】 透けるほど薄くのばした金の色
わずかな光に反射し、人の目に射し込むように入ってくる、金の色。その輝きは、古今東西を問わず、多くの権力者を虜にしてきた。中国から日本に伝わったのは5世紀頃。8世紀初頭には日本でも発見され、以降、高貴なものを飾るのに用いられた。日本では金を薄くのばした箔を使い、主に仏像や建築、絵画などを飾った。その厚さは1万分の1ミリ、向こうが透き通るほど薄い金箔であった。金箔をつくる技術はどこにでもあったが、透けて見えるほど薄くのばす技法は和紙を使う日本だけのもの。その頂点に君臨するのは、戦国時代の前田利家が愛し育てた「金沢箔」である。

【蘇芳色(赤系)】 やや青みを帯びた赤
蘇芳というインド南部やマレー半島などに生育するマメ科の樹木の芯で染め、木の灰を使って発色させた赤色を「蘇芳色」という。日本には中国を通して奈良時代に伝わり、奈良・正倉院には蘇芳染めの木箱「黒柿蘇芳染金銀絵如意箱」も収蔵されている。蘇芳は東南アジアから輸入する高価で貴重なもの。蘇芳色はその美しさと希少性から高貴な人々に好まれた。

【 琥珀色(茶系)】 半透明の黄みがかった茶褐色
「琥珀」は古代に松など植物の樹脂が埋もれ、長い年月を経て化石となった鉱物。中国では「竜血」と呼ばれ、生命の復活・再生の意味をもち、日本では大和朝廷の時代に、とても貴重なもの、権力の象徴とされた。宝石としての価値が高いため、顔料としては高価で使えず、瑪瑙(めのう)の顔料を代わりにして琥珀色を再現することが多いという。日本有数の琥珀産地は岩手県東北部にある久慈。8500万年前の琥珀が、今でも年間1トン採掘されているという。久慈の琥珀は古くから知られ、市内の遺跡からは琥珀の工房跡が発見され、大和朝廷などへ献上された記録が残っている。        

【黒茶色(黒系)】 鋳鉄の重厚な黒
繊細な鋳鉄の重厚な味わいが特長の「南部鉄器」は、みちのくの小京都・盛岡の歴史と自然が織りなしてできた伝統工芸品。盛岡近辺は古くから砂鉄や岩鉄などの良質な原料が産出され、鉄器の製造が行われてきた。南部藩の歴代藩主はいずれも産業・文化に関心が強く、鋳物師や京都の釜師を招き、大砲や釣鐘、茶の湯釜の製造にあたらせたという。その黒く、鈍い輝きは多くの茶人や大名たちに珍重されてきた。

【玉虫色(緑系)】 輝くような深い緑
日本や朝鮮半島、台湾などに分布する体長3センチほどの昆虫、ヤマトタマムシ。深い緑色の羽は、光線の具合によって金属的な「緑」から「紫」に輝いて見え、その多彩で複雑な色調を「玉虫色」、あるいは「虫襖(むしあお)」と呼ぶ。玉虫の羽根は古来、工芸品等にも用いられてきた。光の角度によって鋭い光を放ち、奈良・法隆寺に伝わる国宝『たまむしの玉虫ずし厨子』には、その柱や側面に玉虫の羽が張り詰められている。厨子(仏像などをおさめる箱型の容器)周囲の装飾金具の下に、玉虫の羽が貼ってあることからこの名称がある。

【青磁色(青系)】 灰みを帯びた青緑色
色名の「青磁色」は、磁器の青磁に由来。「青磁のような色」という意味で、青空のような緑みを含んだ明るい青色を指している。青磁は中国で宋の時代から焼かれてきた磁器で、日本に伝わったのは平安時代。その神秘的な美しさから「秘色(ひそく)」と呼んで珍重された。日本の青磁の始まりは、鍋島青磁。鍋島勝茂が関ケ原の役後、京都や江戸で高麗青磁を目にして佐賀でも作れないか研究するよう指示した。これが鍋島窯の始まりとなった。鍋島青磁は製法から色付けまで、すべて秘法とされ、品質保持のために藩が厳しく管理、保護したことで今に至る。なかでも「青磁唐花文水指」(18世紀前期作・今衛門美術館蔵)は鍋島の中では珍しい茶道具として作られ、鍋島青磁の中でも最高の青磁と称賛されている。

【珊瑚色(赤系)】 黄みのある桃色
海中に生育するイシサンゴが形成する、骨軸を採集して磨いたものが古来、宝石として珍重された。一般に「珊瑚色」とは、そうした色。珊瑚は江戸時代になって女性の櫛や簪(かんざし)にあしら われ、男性が帯に挟む印籠や煙草入れの根付(ねつけ)にも使われた。また、珊瑚を砕いて粉末にしたものが絵具として、美人画など日本画の肌の色に用いられる。日本には、752年、聖武天皇が東大寺大仏開眼供養式の時に使ったとされる王冠の珊瑚玉と高さ約15センチの樹状の珊瑚が奈良の正倉院に保存されている。日本で最初に珊瑚が発見されたのは、1812年、高知県の室戸沖で漁師が珊瑚樹を釣り上げたのが始まりとされている。それ以来、土佐沖は珊瑚の宝庫として注目されるが、土佐藩は幕府の目を恐れ珊瑚の採取や販売を中止、正式に再開したのは廃藩置県になってからのことだという。
みどころ

日本の歴史の中で守られ、現代まで受け継がれてきた日本の伝統色。人々の暮らしの中で根付いてきた色もあるが、高貴な人たち、権力者たちが愛した色として、大切に守られてきた色もある。シリーズ4作目となる今回は、歴史上の人物たちが日本の伝統色とどのように関わり、時代や文化にどんな影響を与えてきたのかを、歴史上に登場する人たちが愛し、育てた全7色(金箔色/蘇芳色/琥珀色/黒茶色/玉虫色/青磁色/珊瑚色)に焦点を当てて検証する。