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今回取り上げる伝統色は、茜色(あかねいろ)、萌黄色(もえぎいろ)、露草色(つゆくさいろ)、女郎花色(おみなえしいろ)、橡色(つるばみいろ)の五色。これらの伝統色を歌った和歌を文献、または再現映像でビジュアル化する。

【茜色(あかねいろ/赤)

今でも語り継がれる万葉の恋の物語。その主人公は額田王と皇子だった。

  「茜草指(あかねさす)/紫野(むらさきの)行き/標野(しめの)行き/
                 野守(のもり)は見ずや/君が袖(そで)ふる」(万葉集)

朝焼けのわずかに黄色味が差した赤い空、それが茜色だ。
茜色は茜草の根から取るが、美しく染めるのは非常に難しく、室町時代にその方法は途絶えたと云われている。そんな「幻の色」を復元しようと試みたのが、徳川吉宗だった。しかし試行錯誤の末に失敗、ついに幻の色は出来なかった。そして今、鮮やかな「茜色」を出すことに成功した人がいる。奈良県に住む宮崎明子さん?彼女が復元させた幻の技法を紹介する。

【萌黄色(もえぎいろ/緑)
萌え出る若葉の緑、冴えた黄緑は「萌黄色」と呼ばれ、新しさ、若さを表す。
『平家物語』に老武者が萌黄縅(もえぎおどし)の甲冑で負け戦へ立ち向かう場面があり、その若やいだ姿に敵方さえ涙を流したと云われる。
元来、緑という色は藍(青)と刈安(黄)を混ぜて作り出すもの。
だが唯一、最初から淡い緑色をしたものがある。山繭の糸だ。生糸のダイヤモンドと云われる山繭。その神秘的な生態を追い、山繭の糸を使って反物を織る匠の技にふれる。
さらに萌黄色には不思議な特性がある。近江商人の礎を築いたと云われる萌黄色の蚊帳。
偶然からその不思議な力に気付いた商人が、蚊帳を染めて売り出したところ、爆発的に売れたという。萌黄色には人の心を落ち着かせ、和ませる力があったのだ。

【露草色(つゆくさいろ/青)
恋人の心変わりを「露草色」にたとえて詠んだ歌…

     「つき草の/移ろひやすく/思へかも/
                  わが思(も)う人の/言(こと)も告げ来ぬ」(万葉集)

露草は古くはツキクサと呼ばれた。その性質は弱く、水に濡れると溶けて消えてしまうので、染め物には使えなかった。ところがそんな特性を逆手にとった使い道があったのだ。その「露草色」を、手描き友禅では図柄の下書きに使用する。露草色の下絵は友禅流しのときには消えてしまい、後に残るのは図柄だけとなる。

【女郎花色(おみなえしいろ/黄)
美しい響きをもつ「女郎花色」。それは女性を敬愛する色とされてきた。

     「名にめでて/折れる計(ばかり)ぞ/女郎花/
                         われおちにきと/人に語るな」(古今集)

女郎花は粟粒ほどの黄色の花をつける秋の七草のひとつ。語源は東北地方にあるとも云われ、万葉仮名では13もの文字が当てられている。
初秋の野山に黄色い粉を散らしたような女郎花の花、その色が「女郎花色」だ。緑の上に散った黄色は、混ぜて作れる色ではない。
そこで古の人たちは「襲(かさね)」という、日本独自の色表現を編み出した。代表的な襲には、色の異なる二枚の薄衣(うすぎぬ)を重ねる方法と、色の異なる糸で互い違いに織る方法とがある。
襲には春夏秋冬の決まりがあり、古人はその着こなし、美しさを競った。
京都に住む泰宏子さんは襲(織り)の技法を今に伝える人だ。彼女の手によって、古の人たちが愛した「女郎花の襲」が織り出される。

【橡色(つるばみいろ/黒)】
太古の昔から親しまれ、染料とされた色、それが橡(つるばみ)色だ。

     「紅(くれない)は/移ろふものそ/橡(つるばみ)の/
                馴れにしし衣(きぬ)に/なほ若(し)かめやも」(万葉集)

橡とはブナやクヌギ、ナラなどの古い呼び名。その実は食用や染料とされ、樹皮もまた簡便な染料として使われた。 それだけに「橡色」は誰でも出せる色、庶民の色とされてきた。
しかし平安時代になると仏教との関わりが深まり、法衣あるいは喪服に使われるようになる。
紫式部の「源氏物語」には、喪の場面があり、関係の深さによって橡色の濃淡を使い分けた様子が描かれている。
技術としては古い染色法。・泥染め(どろぞめ)が今も残っている。
特産である織物の長さが島の名前の由来になったという八丈島。この島ではスダジイという広葉樹の樹皮で染めた生糸を、鉄分を含んだ泥で「橡色」に定着させる。
そんな伝統の技を守り続けているのが、都の無形文化財技術保持者・山下八百子さん率いる「めゆ工房」だ。その仕事風景を紹介する。

みどころ

日本古来の伝統色店。その多くは大自然の中の彩り、美しい四季の草花から作られた。そして私たちの先人たちは、古(いにしえ)の頃から春夏秋冬を歌に詠み込み、文章に託して今日に伝えている。
古の歌人たちが親しみ、
愛し、文学にまで高めた伝統の色。
その中から代表的な五つの色(和歌や文章)を選び、その歴史や時代背景、染める方法、今日に至るまでの「色の文化」を深く掘り下げ、その美しさをハイビジョン映像でお届けする。