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2015.11.08
清流と巡る熊野古道 ~和歌山・熊野古道~

今回ご案内するのは、前回に引き続き、世界遺産に登録されている熊野古道。
「熊野本宮大社」「熊野速玉大社」「熊野那智大社」、熊野三山と称される3つの神社をつなぐ、古の参詣道。実は、その道沿いには、熊野川や太平洋だけでなく、清流をたたえる渓谷や名瀑、温泉など、水の名所が点在。今回は、熊野古道のもう一つの楽しみ方をご提案します。
最も多くの旅人が歩いたのは、京都から大阪・和歌山を経て三社を巡拝する「中辺路」。そして、中辺路で最初に辿り着くのが、和歌山県田辺市に鎮座する熊野本宮大社。熊野本宮大社から車でおよそ5分。大塔(おおとう)川(がわ)・川(かわ)湯(ゆ)温泉がある。
熊野の森の中を流れる一級河川・熊野川の支流「大塔川」。川沿いには、川の中からお湯が湧く、全国的にも珍しい温泉「川湯温泉」がある。川底から絶えず、70度のお湯が湧出している。冬の期間限定で催される、川の水をせき止めた巨大な露天風呂「仙人風呂」でも有名な湯治場。

  • 熊野川

川湯温泉から県道241号線を車で走ることおよそ20分。大塔(おおとう)渓谷がある。標高1,112メートルの大塔山(おおとうざん)を源とする渓谷。約8キロにわたって両岸に峻峰がそそりたつ深山幽谷。春はコブシ、夏は深緑、秋は紅葉と、四季折々の景観が見事で、ハイキングスポットとしても人気。渓谷沿いに滝が点在している。
その昔、弘法大師が熊野詣の道中、大塔山のふもとで昼食を食べたとき、木の枝を折って箸の代わりに使い、食事後、その枝を土へ突き刺した物が成長して現在の二本の大杉になったと伝えられる弘法杉がある。
熊野三山二つ目のお宮、熊野速玉大社へは、川の参詣道で向かう。紀伊半島を縦断する熊野連山をぬうように流れる熊野川。かつての巡拝者たちは、船で川を下り、熊野三山の次のお宮、熊野速玉大社へと向かったのだ。その光景を今に伝える川下り舟も運航されている。
熊野速玉大社の近くには、新宮市の発祥地でもあり、眺望の名所でもある元宮が鎮座する。

  • 熊野速玉大社_奥宮神倉神社参道

熊野速玉大社・元宮(神倉神社)
源頼朝が寄進したと伝わる、自然石を積み上げた「鎌倉積み」と呼ばれる石段が538段続く。足がすくむほどの急こう配。独特の造りをした、鎌倉時代の貴重な遺構。社とゴトビキ岩石段を上りきると、熊野速玉大社の元宮・神倉神社と熊野大神が降臨したと伝わる「ゴトビキ岩」。ゴトビキとは、この地方の方言で「ヒキガエル」を指す言葉。岩の形がヒキガエルに似ていたことから、そう呼ばれるようになった。
およそ2000年前にこの岩に神が降り立ち、創建された新しいお宮が「熊野速玉大社」であり、その新しいお宮がある町ということで、新宮市の由来となった。続いて、熊野那智大社へ。熊野速玉大社のある新宮市から海の熊野古道で向かう。 三重県志摩から和歌山県串本まで、およそ150キロに渡って続く「熊野灘」。黒潮に乗って多くの良質な魚が集まる、日本有数の漁場としても知られる。江戸時代には、遠州灘、相模灘と共に、江戸と上方を結ぶ「海の東海道」として多くの帆船で賑わっていた。
熊野市から紀宝町まで約22キロも続く日本一長い砂礫海岸「七里御浜(しちりみはま)」。熊野川と同じく、この海岸も熊野古道のひとつ、浜街道というルートにあたる。「みはま小石」と呼ばれる小石がびっしりと埋め尽くした浜は、「日本の渚百選」や「21世紀に残したい自然百選」にも選ばれる景勝地で、アカウミガメの上陸地でもある。
熊野那智大社は標高はおよそ350メートル。山々の緑の中に、朱色の美しい社殿が立ち並ぶ。あわせて十三の神々をまつる。第一殿にまつられているのは、大滝の神「飛瀧(ひろう)権現」。熊野那智大社が独自に信仰してきた神で、その御神体は、観光名所としても知られる名瀑「那智の滝」。

  • 那智の滝

那智の滝へ向かう途中、熊野那智大社と隣接する那智山「青岸渡寺」にもお参りしましょう。西国33カ所観音巡りの第一番礼所。かつては那智の滝を中心にした、神仏習合の一大修験道場だったが、明治初期にお寺と神社に分離された。しかし、その名残から、今でも巡拝者の多くは双方を参拝するのが習わしになっている。本堂前から振り返ると、三重の塔と那智の滝。絵ハガキのような光景。こうした絶景も、熊野が浄土の地であると人々に思わせた理由の一つなのかもしれない。

  • 那智の滝に続く参道

趣深い石段を下っていく。徐々にごうごうとうなる滝の音「那智の滝」。
日本一の名瀑。「一の滝」ともいわれる那智の大滝は、落差133メートル。滝つぼの深さは10メートルもある。そんな大滝をはじめ、那智の山には60以上の滝があり、そのうちの48の滝が、滝行の修験場となっていたという。

  • 那智の滝

今回は、海、山、川と、雄大な自然に抱かれた土地「熊野」をご紹介します。