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2015.11.01
世界遺産 祈りの参詣道 ~和歌山・熊野古道~

今回ご案内するのは、世界遺産にも登録され、国内外から観光客を集める熊野古道。 熊野三山と称される「熊野本宮大社」「熊野速玉大社」「熊野那智大社」、3つの神社をつなぐ、古の参詣道。
そんな熊野三山があるのは、紀州半島の最南端、和歌山県にある田辺市、新宮市、東牟婁郡那智勝浦町。大自然に囲まれた豊かな場所。「蟻の熊野詣」と称されるほど賑わった熊野古道。「熊野三山」と称される、熊野神社の総本宮である3社を巡る。
しかし、なぜ人々は、京の都から遠く離れた熊野へわざわざやってきたのか。
古の人々と同じように中辺路で三社を巡拝しながら、その答えを探しましょう。

  • 熊野本宮大社大斎原

紀伊路、伊勢路などいくつかのルートがあるが、多くの旅人が歩いたのは、京都から大阪・和歌山を経て山中に分け入り、三社を巡拝する「中辺路」であった。後鳥羽院・藤原定家・和泉式部も歩いたとされる、いにしえの道。
京の都から歩くこと、およそ1か月。かつての巡拝者たちは、ようやく1つ目のお宮の鎮守の森を臨む。旧社地・大斎(おおゆの)原(はら)の鎮守の森は、現在の熊野本宮大社から歩くこと5分。旧社地として今も残る。高さ33.9メートル、日本一の大きさを誇る鳥居。洪水で流される前、かつて社殿があった旧社地。静けさと緑に満ちた広場。現在は、2基の石の祠が建てられ、八柱の神々がおまつりされている。「熊野本宮大社」には熊野三山の3つのお宮に共通する「熊野十二所権現」という十二柱の神をまつるが、ここに鎮座するのは、主祭神を含めた四柱。ほかの八柱は大斎原にまつられている。

  • 熊野本宮大社参道

紀伊半島を縦断する熊野連山をぬうように流れる熊野川。奈良、三重、和歌山の三県にまたがり、太平洋へと流れ出る。この川も世界遺産の構成資産のひとつ。実は、熊野川は世界でも珍しい川の参詣道。かつての巡拝者たちは、船で川を下り、熊野三山の次のお宮熊野速玉大社へと向かったのだ。その光景を今に伝える川下り舟も運航されている。
「熊野速玉大社」は熊野川の河口にある町・新宮市に鎮座する、熊野三山二つ目のお宮。
朱塗りの瑞垣の向こうには、美しい5つの御殿が立ち並ぶ。主祭神である熊野速玉大神は、神仏習合の時代は、民衆の苦しみや病気を癒す薬師如来として信仰されていた。

  • 熊野速玉大社
  • 熊野速玉大社入口

続いては熊野速玉大社がある新宮市から海岸線をたどり、那智勝浦へ向かう。熊野三山3つ目のお宮、「熊野那智大社」が鎮座している。
標高はおよそ350メートル。山々の緑の中に、朱色の美しい社殿。拝殿の奥に、朱色がまぶしい本殿が建ち並ぶ。急こう配の山の中腹にあるため、他の2社のように横一列ではなく、「く」の字に建てられている。

  • 熊野那智大社

「蟻の熊野詣」と、蟻が行列を作って行き来する様子にたとえられるほど、大勢の人々が列をなして歩いた熊野古道。
なぜ人々は、京の都から遠く離れた熊野へわざわざやってきたのか。
それは、熊野三山が、貴族から武士、庶民や病人に至るまで、身分や性別を問わず、誰でも受け入れたから。懐の深い熊野の神々に救いを求めて、極楽往生や現世の利益、病気治癒など、さまざまな願いを抱いて人々は巡拝へと出かけたのだ。