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2015.07.26
日本三大霊場(れいじょう) ~青森 恐山・仏ヶ浦~

今回ご案内するのは、創建からおよそ1200年。和歌山の高野山、滋賀の比叡山に並ぶ日本三大霊場のひとつ、恐山。亡者に憑依する「いたこ」で知られる霊山で、下北半島国定公園に選定されている。

  • 恐山1
  • 恐山2

恐山といえば、荒涼とした大地に似つかわしい、色鮮やかな風車が回る風景が有名。そして、“恐山の奥之院”とも称される名勝・仏ヶ浦へ。なぜここが奥之院といわれるのか。その理由を探しに行きましょう。恐山には俗界と霊界との分岐点として設けられている「結界門」がある。入口にかかる朱色の太鼓橋。悪人には、この橋が針の山に見えて渡れないという。橋の下には、透明度の高い川。霊界と俗界との境である「三途の川」だといわれる。正式には「正津川(しょうづがわ)」とよばれ、津軽海峡に注ぐ。

  • 太鼓橋

最初にそびえるのは総門。山門は平成元年に建立された豪壮な二層式。赤い屋根が印象的な本堂は、供養道場といい、こちらをお参りしてから本尊が鎮座する地蔵殿へ向かう。標高879メートルの釜臥山(かまふせやま)をはじめとした蓮華八(れんげはち)葉(よう)と称される山々の総称である恐山。1万年以上前の太古に噴火した活火山で、流れ出した溶岩が、この荒涼とした大地を作りだした。あちらこちらから水がしみ出し、硫黄で黄色くなった小川を作っている。岩場のあちこちから硫黄が噴き出し、独特の匂いに包まれている。この殺伐とした風景が、あの世、地獄を思わせる。

亡者が集まる場所と言われる恐山。その魂を鎮魂するのが、恐山菩提寺。本尊は延命地蔵菩薩。地蔵菩薩は人間のさまざまな苦しみを救ってくれる仏。20万坪という菩提寺の広大な境内には、あの世を思わせる場所が点在。地獄谷と呼ばれる多数の地獄を模した場所を巡り、参詣者は亡者の成仏を願う。修羅王地獄は「危険」という看板がかかる地獄。硫黄ガスが噴き出し、地獄さながら血ノ池地獄は中でも有名な地獄。まれに藻が発生し、池の水が真っ赤に染まるという。賽の河原にはところどころ石が積まれている。境内の樹木に結び付けられた手ぬぐい。境内のいたるところにある風車。恐山に象徴ともいえる派手な色の風車も、亡者に捧げられたもの

  • 恐山菩提寺
  • 恐山菩提寺2

地獄の山を抜けると、美しい湖が見えてくる。「宇曽利湖」は、火山の活動で出来たカルデラ湖で、周囲12.5km、ほぼ円形の湖。抜けるような青さの水面。蓮華八葉の山影を映す湖面は、まるで絵葉書のよう。しかし、湖水は強い酸性で、黄色く見える箇所は硫黄が湧きでているのだと言う。ウグイがわずかに生息しているだけ。極楽浜の名の通り、美しい光景だが、実際は死の湖。

  • 宇曽利湖

“恐山の奥の院”とも称される名勝「仏ヶ浦」が、同じ下北半島にある。恐山と同じく国定公園に指定されているほか、国の名勝、天然記念物、「日本の秘境百選」にも選定されている。陸奥湾に面した海岸沿いに2キロ以上に渡って、奇岩が連なる海蝕(かいしょく)崖(がい)。奇岩には、浄土のイメージを重ねて「如来の首」「五百羅漢」「蓮華岩」「極楽浜」などの仏教にまつわる名がついている。どれも驚くべき大きさである。そんな奇岩が連なる海岸に、恐山菩提寺と同じく、地蔵菩薩をまつる「地蔵堂」がある。恐山と一体をなすものとして、恐山を参拝した後、ここを巡拝するのが習わしだったという。

風車がカラカラとまわり、荒々しい岩場の合間から、硫黄の臭いが立ち込める地獄。極楽浄土を思わせる、抜けるような青をたたえた美しい湖。忘れられない故人を思う人々の思いが、日本三大霊場・恐山の1200年の歴史を今日もつむいでいる。