アジアの風

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【第15回】2012年7月14日放送株式会社 悠心

二瀬 克規さん
株式会社 悠心 代表取締役社長 二瀬 克規さん 1949年生まれ。高速自動充填機DANGAN−Vの開発、設計、製造、販売を手がける。09年に発売され大きな反響を呼んだヤマサ醤油の「鮮度の一滴」には、同社の開発品であるPIDが用いられている。PIDの中核となるフィルム弁を取り付けたリバースポーチは、空気の進入を防ぐ逆止弁の機能を持つ新規の液体包装袋で、成分の劣化を防止する効果を持つ。創業のきっかけは、長年培ってきた技術力等を活用し社会企業家を目指したところにある。エコロジー、省エネルギー化にも積極的に取り組む。

アジアの風今回ご紹介したのは、新潟県三条市の企業“悠心”。まだ創業5年目の若い会社ですが、この企業が生み出したあるパッケージを使った製品が今、日本の食卓に話題を呼んでいます。それが、ヤマサ醤油から発売されている「鮮度の一滴」という醤油。2009年の発売以来、1年半で500万本を突破するという人気ぶりですが、その人気の秘密は悠心の作る魔法のパッケージ「PID」にありました。

「PID」は開封後も新鮮さを保ち、醤油の味を使い切るまで保つという特徴をもっています。その秘密は開封した後でも、中に空気が入らず中身の液体が酸化しないということ。しかもこのPIDは通常のパッケージ容器とは違い、蓋がないのです。

アジアの風この技術を開発したのは、社長の二瀬克規さん、63歳。もともとは大手のフィルムパッケージ会社で開発担当として活躍していた二瀬さんが、かつて手がけていたのが調味脂を入れるラミネート袋。一度開封したら、保存が効かないため、使い切れなければ残りを捨てるほかなかった。  そんな無駄をなんとかなくすことができないかと考えていた二瀬さん。長い試行錯誤を経てたどり着いたのが、このPIDでした。PIDは、毛細管現象と呼ばれる現象を巧みに利用して、開封されたパッケージフィルムの数ミクロン、数十ミクロンというごく薄い隙間を液体が満たすことによって蓋の役割をするという仕組みになっています。開発担当として技術に携わってきた二瀬社長ならではの斬新な発想でした。

アジアの風そんな二瀬社長は悠心のPIDを武器にアジアへの進出を考えています。狙うは、近年目覚ましい発展を遂げつつあるインド!…そしてベトナム。
「やはりアジアにはアジア向けの商品を開発しなければいけない。もちろんそれはコストの面も含めてですね」と語る二瀬社長。早速ベトナムから戻ってきたスコアシートを見てみると、「ベトナムの主要調味料はヌクマムと云う魚醤が中心で、注目すべき新規市場と思われる」と明るい提案が!しかし価格についてはあまりに前例のない商品のため、見通しがつかないとの評価。課題は残るものの充分期待が持てそうな結果となった。そして、インドからは「中身が醤油のままでは低い評価だが、PID自体には可能性がある。冷蔵庫の普及率が低いインドでPIDの常温保存能力は高く評価される可能性がある」という評価。では、醤油以外でインドに受け入れられる中身の液体とは一体何が相応しいのか。実は、二瀬社長も醤油以外に様々な液体でPIDの保存性をテストしていた…。その中でもインドに相応しいと思われるのが牛乳だった。インドは牛乳の消費量にかけては世界の30パーセントを占めるほどだ。しかし、現地から得た情報によれば、インドでは冷温物流方式(コールドチェーン)が整っておらず保存性云々の前に品質管理という根本的な問題が横たわっていたのだ。

アジアの風しかし二瀬社長はインドではインフラがまだまだ未整備だが、今後成長していくことを見越して先行投資すると共にインドにはインド用のPIDを考えていきたいと熱く語った。

ラミネートの開発担当として始まった二瀬社長の保存のきくパッケージ実現への夢。それは日本で革命的な醤油パッケージとして花開き、さらにアジア展開という新たな夢に向かって歩み始めたばかり。新鮮で長持ちするPIDが将来、インドをはじめとするアジアの食卓に並ぶ日は近い。

会川精司さん
会川アジアビジネス研究所 会川精司さん (株)会川アジアビジネス研究所代表取締役。元ホーチミン日本商工会会長。1972年日商岩井株式会社(現双日株式会社)入社以来、ベトナムビジネスに永く従事、現在は第一人者としてベトナム進出日系企業のコンサルティングにあたる。2005年2月ホーチミン市人民委員会より、民間人初の「ホーチミン市勲章」を受賞。著書(「ベトナム進出完全ガイド」及び同著「改訂版」など)、講演・研修・企業相談等多数。
福井浩之さん
伊藤忠インド会社 生活資材部長 福井浩之さん ニューデリーに赴任し2年。日本企業(生活資材・FMCG関係)のインド進出サポート、資材納入を担当。
日本の良いモノ・サービスを如何にしてインド人に受け入れられるように改良するか、マーケットの違いに驚きを感じながら日々奮闘中。
インドでの座右の銘: あわてず・あせらず・あてにせず。。でもあきらめず。
泉谷秀哉さん
伊藤忠ケミカルフロンティア株式会社 ポリマー原料事業部 ウレタン・化成品部長 泉谷秀哉さん 伊藤忠商事株式会社化学品部門に所属、石油化学関係を専門とし、業界にも精通。
韓国・フィリピン・インド(デリー)等、海外駐在経験も豊富。